公開日:2024/04/12

最終更新日:2024/04/15

「欧州電池規則」がもたらすインパクト③
- 上市までのプロセスと適合性評価 -

前回の②では、欧州電池規則におけるカーボンフットプリント(CFP)の算定やサプライチェーンのデータ連携に焦点を当てました。
今回は、同規則に基づく製品の上市プロセスや報告書の開示、第三者検証、サプライヤーとOEMの間でのCFPデータの連携について解説していきます。

上市までのプロセス

本章では、欧州電池規則に従って、蓄電池を欧州市場に上市するためのプロセスを詳細に説明していきます。
同規則の原文*1のArticle4、Article6における要求事項を参照し、また第三者検証機関へヒアリングを行い、以下の業務順序を洗い出しました。

出典: 欧州電池規則を基に(株)ゼロボード作成


2025年2月18日に同規則のCFP算定要件が施行される際、蓄電池パックの製造業者や電動車メーカーは、すべての手続きを完了させ、電動車を欧州市場に上市させる必要があります。
各過程に掛かる期間は、欧州への車両の輸送に 2ヵ月、CEマーキングの貼り付けや蓄電池の取り付けに 1~2週間、Notified Bodyによる評価からStatement発行までに 2ヵ月程度かかると想定されます。
そこから逆算すると、関連文書の作成は、2024年の8~9月中に完了する必要があります。
(*ただし、CFPに係る細則の発行が2024年2月の予定だったが、現在(2024年4月9日)まで発行されていない。今後、細則案発表→パブリックコメント⇒WTO/TBT⇒細則の発行 の流れで進んでいく。そのため、当初予定されていた2025年2月18日に適用開始はできず、おそらく2025年後半(細則の発行1年後)から適用開始されると想定される。)

適合性評価機関:Notified Body

Notified Body は、同規則との適合性評価を行う第三者検証機関であり、欧州委員会加盟国の国内法の下で、Notifying authority によって認定されます。
代表的な Notified Body には TUV SUD社、ソコテック社、DNV社、SGS社、BSI社などがあり、日本に支社を持つ機関もあります。

同規則の原文のAnnex VIII、モジュールD1によれば、蓄電池の製造業者は、製品を欧州市場に投入する際に、Notified Body に適合性評価の申込を行う必要があります。
この申込には、特定の情報や文書の添付が必要であり、その中には、いくつかの技術文書、品質システム文書、CFP研究文書などがあります。

出典: 欧州電池規則を基にゼロボード作成


サプライヤーとメーカー間のCFP関連情報の連携

欧州の研究機関であるJRCのレポートによると、蓄電池のCFP算定の際には、セル、正極材、負極材、電解液、正極活物質、負極活物質などの各構成部材についての、原料ごとの構成量や製造時のエネルギー消費量が必要となっており、それらは、製造現場の一次データを使った算定が必要とされます。
すなわち、宣言事業者である蓄電池製造業者は、電池セルメーカーや電極メーカーなどのサプライヤーと、部品単位の排出量情報の連携が必要となります。

出典: 欧州電池規則を基にゼロボード作成



Notified Body の適合性評価に向けて必要な「非公開版CFPサポーティングスタディーレポート」の作成においては、サプライヤーにとって事業上秘匿性の高い、セルや電極などの原料の構成情報や、電力・水などのユーティリティーの、製品単位の消費量情報の提供が要求されます。
連携が必要な情報が錯綜しているため、連携目的からひも解いて、以下に整理します。


出典: 欧州電池規則を基にゼロボード作成



上記の整理に基づくと、部品のCFP明細情報など、必ずしも宣言事業者(蓄電池メーカー)を介する必要がない情報も存在します。そのため、JRCレポートでは、サプライヤーとメーカーと Notified Body 間でのデータ連携のオプションとして、以下のように提案しています。

出典: 欧州電池規則を基にゼロボード作成



日本のOuranos Ecosystem (ウラノス・エコシステム)の開発方針では、サプライチェーン上のデータ連携に関するガイドラインに、CFP証明書の連携が明記されており、オプション②が想定されます。同規則に対応するためには、メーカーとサプライヤー間で慎重に協議する必要があります。

欧州電池規則対応を支援いたします

今回は、同規則に基づく、蓄電池の上市までのプロセスを中心に、開示が要求される報告書、報告書に対する第三者検証、および検証要件を満たすためのサプライヤーとOEM間でのCFPデータの連携パターンについてレポートしました。
同規則への適合性評価のために必要な作成文書と、サプライヤーとメーカー間でのCFP関連情報の連携オプションについては、詳細に説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

欧州委員会や欧州OEMの動向等については、またの機会にご紹介出来ればと思います。

弊社、株式会社ゼロボードでは、自動車OEM様、蓄電池サプライチェーンに関連する企業の皆様の欧州電池規則対応を支援する、「Zeroboard for batteries(ゼロボードフォーバッテリーズ)」というクラウドサービスを展開しています。
CFP算定はもちろんのこと、ウラノス・エコシステムとの連携機能や、人権・環境デュー・ディリジェンス対応機能等も備えています。
ご興味のある方は、是非お問い合わせください。

(株)ゼロボードの「欧州電池規則」シリーズ

  1. 1.「欧州電池規則」がもたらすインパクト①-概要とCFPの算定要求-
  2. 2.「欧州電池規則」がもたらすインパクト②- サプライチェーンを繋いだCFP算定 -
  3. 2.「欧州電池規則」がもたらすインパクト②- 上市までのプロセスと適合性評価 -
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profile

野底琢、大神田佳希

<所属>株式会社ゼロボード 営業本部ソリューション開発室
<専門分野>CFP、自動車領域

<紹介文>欧州電池規則に基づくCFP算定、Ouranos Ecosystemへのデータ連携の開発方針策定、実証事業など幅広く自動車関連事業をリード。